雨竜川第二弾草稿 災難

雨竜川第2弾草稿

ある昼下がり、母が、おわんに
入った白いものを庭のアスパラ
ガスの根元にかけていた。

何だろう?

「健治が、いつまでもオッパイ
欲しがるから、カラシをぬったん
だよ」
と母は言った。

農作業のため子供にオッパイ
をあげる時間がないのだとのこと。

私は、母が自分のオッパイをし
ぼって、おわんに入れる姿をみた。
私が、そのおわんを庭に持ってい
く手つだいもした。

でも、何だかおかしい。母はオッ
パイを吸おうとした健治が、カラシ
をなめてビックリしたと言った。
私も、その顔をみた気がするのだ。

カラシをぬったのは、いつだろう?

私のオッパイ時代は、2歳だとした
ら、健治兄は4歳。そのころ、母の
オッパイは、私のもののはずだった。

じゃあ、カラシをなめたのは私?
このときの記憶が断片的で、
はっきりしていない。

ボウーとしていて気持ちが悪い。
ところが、この前、突然、そのとき
の情景を思いだした。

余りにも唐突に頭の中に浮かん
だので驚いた。

私が、母の右がわのオッパイを
吸っていた。健ちゃんが左がわの
オッパイに口をつけた瞬間、ビック
リして飛び上がった。

目を白黒させていた。私も何事
かと思わず、口を放した。

そうだ、時々、一緒に吸っていた
のだ。お兄ちゃんなんだから、もう
止めなさいと母がカラシをぬったのだ。

そのかいがあって健ちゃんは、吸わ
なくなった。母は、左側のオッパイを
絞りだして庭の肥やしにしていたのだ。

そのうち、私も吸えなくなった。
男の子は、いつまでも甘えんぼう
で困ると母がいっていた。

おぼろげにかすんだことも、記憶の
糸を必死にたぐると、思いだせるも
のだと知った。